王国の安寧を支えるための密約のような、「精神崩壊寸前の若き王を支えつくす」という任務を、その王政を支える両輪ともいえる、公爵家と侯爵家が、残酷ともいえる最善策を決め、それを遂行する。この物苦しい、重い任務を、公爵家のたぶん宝石のように育てられた少女と、侯爵家の令息がタッグを組んで10年間、立ち直りつつある若き王とともに三人が同志となって支え合う。作品の大半がこういう内容だったら、途中で疲れて読むのをやめただろうと思います。でも、それはストーリーの 1/3 ほどで、その後、10年計画の離縁の成就、元王妃となるプリシアと侯爵との再婚へと話の重点が移り、とても楽しく読めました。
少女王妃が必死で、若い王の心の病を和らげる方法を考え、実践するシーンはほのぼのとしていて、王妃自身に貴族たちの非難がむくよう立ち振るまうシーンは気高くて引き込まれました。
そんな再婚へと向かう2人がようやく、苦しい心の中を分かり合うセレナーデはクライマックスとして十分でした。このセレナーデを歌うシンシアと、侯爵の契約のような結びつきを謎解きのように描く終結は、おとぎ話の締めくくりとしても良かったです。
ただ、心情をつづる文章が物足りなく、語句の足りなさを感じました。