ヒーローとヒロインのクラシックな恋人関係は微笑ましく、甘酔いしそうになります。
しかし、ヒーローが御曹司のパイロット、ヒロインが管理栄養士の素振りがほとんど感じられません。ここに出てくるパイロットは少し忙しいサラリーマンで、管理栄養士は料理好きな女の子(にも関わらず、いきなり結婚と同時にカフェ開業)に過ぎません。職業名のイメージだけで話を進めているので、現実味のない日常と甘いシーンだけがだらだら続きます。次女の話はモデルとデザインの世界でしたが、出来過ぎな展開とはいえ、まだ少しはリアルな世界でした。作家の職業への関心度の違いでしょうか。フィクションを描く上で、作家は読者にいかに巧みな嘘を見せるのが醍醐味。職業などの細部はどうでもいい、二人の甘い世界だけをえんえんとお楽しみ下さいというならば、成功している作品でしょう。