小山田あみ先生のイラストが好きなので、先生の過去作品は初期の作品迄殆ど読んでいます。そして、気に入った小説は手元に置いているのですが、悲しいことに一冊しかありません。先生の絵は素晴らしくても話に満足しないと繰り返して読もうという気にならないのです。そういう意味で言うと、此の小説も私の手元から離れていく作品です。何時もの如く先生のイラストは作品を忠実に再現していて美しいものです。けれども主人公の月舘仁と死神ランツェフィールドの遣り取りが余りにも作者のご都合主義で仁にとって全てが上手く行き過ぎて白々し過ぎるのです。まるで、下手な漫才を観ているようで読むのさえ嫌になってしまいました。表紙絵の仁の左腕の格好と下衣のポケットに入れた手を見れば、仁のふてぶてしさが良く表されていると分かるのですが、表紙を縁取る意匠のような高尚なものを期待したのが間違いだと気付きました。折角、小山田あみ先生がイラストを担当してくれるのだったら、それに相応しい話を書いて欲しいと思ってしまうのは間違いでしょうか?