この作家さんの文体や筋立てのファンになり、5作品ほど読みました。この作品は、神社・神職・神事など興味深い背景が分かりやすく描かれていて流石と思います。
でも、ファンタジー仕立てにしたいのか、幼いときの小動物の生贄を目の当たりにしてトラウマになっているヒロインと、東京の大手企業でキャリアを重ねるヒロインがかなり乖離していて、そこにどろどろした犯罪を絡めているのにその結末もあやふや。神話の再来なのかどうかをファジーに描くのは分かりますし、面白いのですが、筋立てを凝るあまり、ヒーローの出自や血筋を後出しジャンケンのように後半に怒涛のごとく書いているところが、潔くなく、しらけました。ここまで飾り立てなくてもいいのに。
さまざまな人たちの心の葛藤やら執着やらが、自然災害から生き残ることですぱっと晴れるものなのか? 自然に頼るしかもう術はなし? かなり残念でした。