この作品の聖女は、その出自がストリートチルドレン。生きるために盗みを働き、時には他人を出し抜いたり、自分の獲物を守るために他の子と闘ったりしてきました。粗暴で言葉遣いも荒い6歳の少女、聖女を擁する宗教の信者ですらない(そもそも神など信じていない)彼女が、なぜか女神の神託で聖女にされた…そもそもこの世界ではあり得ない状況が、この物語の設定です。彼女は、世界の「建前」と「本音」を、一切の容赦無く、時も場所も選ばずに暴露してしまいます。聖女、王子、聖女を管轄する教団トップの教皇までもが、聖女と話すと「本音」で語り合う(やり合っている‥とも言う)状況にもって行かれてしまう。世界の頂点に立つ人々の本音を知ってしまうと、彼らに対する「素敵な?」イメージが、ガラガラと音を立てて崩壊していきます。この世界の「まともな常識」をもっている人々は、聖女の言動やツッコミに、まずついてこられません。その、一瞬の間と次に来る彼らのリアクション(普段だったら絶対に表に出さない内心)を、作者さんは実に絶妙に描いておられます。そして、私は大爆笑させられるのです。読んでいると、「聖女とは何か?」「聖女が住んでいる女子修道院は、どういう所か?」…何度もしつこく、念押しのように出てきます。でも、読者はそれを読んで一々原点に立ち返らないと、規格外の聖女の言動に巻き込まれて、単なるアホなドタバタ喜劇を読まされているような感覚に陥ってしまうと痛感します。この作品、1巻の中程までは我慢!です。その後、怒涛の勢いで面白くなっていきます。2巻読み終わって、一番気になるのは、女神はこの聖女に何をさせたいのか?2巻まででも、息つく暇もないくらいトラブルと事件の連続だったのに、この先どこへ転がっていくのか?早く次を読みたい!です。