本が好きで人情にあつい庶民の雪明は7番目の皇帝候補ですが、切れ者宰相の美丈夫・天宇が雪明の清廉潔白な性質に惚れ込み、次期皇帝にしようと奔走します。皇帝の印であるケモ耳が「秘儀」によって現れるということで、その「秘儀」とはもちろんアレです。そしてこの雪明という男、とにかく高潔、清廉、温厚で人徳がいかに高いかということが天宇の口から語られるシーンがてんこ盛りです。そんな人物なのに、雪明は脇が甘いというか隙だらけというか、ウブウブで純粋な、恋愛面で楽しめる仕様の子でした。雪明が逃げた時、天宇が雪明の大好きな本で罠を仕掛けておびき寄せるくだりがよかった。ラストのSSが物語に深みを与えています。雪明を皇帝にするために、天宇はおのれの気持ちを封じるつもりだったのだ、ということと、背景の祭りの賑やかで楽しい雰囲気、何の憂いもなく祭りを楽しむ天真爛漫な雪明との対比で、いっそう切なくなりました。満足度の高い作品でした。