このレビューはネタバレを含みます▼
先生の作品で最初に読んだ『世界の果てで待っていて』にハマっての二作品め。どちらも未完の上に長らく続きが出ていない(予定もない?)のを承知の上で、評価の高さに我慢できずに読んでしまいました。
結論から言うと、まぁびっくりするくらい良い所で続く…となるので、ご自分の性格と相談の上で読み始めるかどうかは自己責任でお願いしたいです。ちなみに2巻のあとがきで先生は「3巻完結」と仰っているので、待つにしても残り1巻ではあります。
『世界の果てで待っていて』でも思いましたが、やはり言葉のセンスが卓越していると思いました。始まって直ぐの玲のターンの一行目で、いきなりグイッと惹きつけられます。
「スリの利き手は心臓だー」の一文は、芸術的と言えると思いました。他にも叙情的で矛盾しているようで…でも真理で、やけに腑に落ちる言葉の数々がありました。「ー矛盾を抱えたまま、それでも地球は回っている」は、小説の中だけでなく現実世界の理でもある気がしました。
1巻の残り2割を切った辺りでの先輩刑事の言葉が、まぁ重いです。「警察は正義の味方じゃない」から始まり「万人にとっての正義なんてない。正義は規定できない」と。法で正義は貫けない、犯罪だけが正義を全うすることができる特殊な状況(タイトルを彷彿とさせる正にグレーゾーン)に絶望的な気持ちになりました。
それは刀浦も同じで、彼は彼なりの(警察とも犯罪とも違う?)正義の元に動いているような気がしました。健斗へ問いかけた言葉「おまえはーお前が、言えるのか」…この「は」と「が」のたった一文字が、計り知れない差を生んでいると思いました。
主語はどちらも「お前」ですが、「は」なら純粋な問いかけに聞こえます。だけど、重ねて更に「が」に変えることによって、私は反語のような威圧感を感じました。「お前が、言えるのか(言えないよな。言わないよな)」括弧内のセリフまで込みで投げかけられてるような、もっと言えば「言わせねぇ」まで聞こえるようでした。
本編にマジシャンが出てきますが、それこそ作家さんは言葉・文章を自在に操るマジシャンみたいだなと改めて思いました。