このレビューはネタバレを含みます▼
朝松健氏の小説を読むのは初めてです。試し読みをして、面白そうだと思ったのと、価格の安さに釣られて読んでみました。
江戸水戸領上屋敷から函館奉行に、公儀弾込方として、函館の治安維持の為に呼ばれた男、橘丈太郎は、日露の混血故の容貌が優れて人目を惹き、左右の眼の色が違うこともあり、一種の人外のような活躍を期待されています。
鬼殺しという名を持つ大刀と銃を携えて、誘拐された鋳掛職人、堂屋久五郎と娘のお恵を助け出すのかと思っていましたが、さにあらず、救出の遅れにより、お恵は深手を負い手当の甲斐もなく悲しい言葉を残して亡くなってしまいます。
更に、知り合った混血児のアンナ・ホーも、丈太郎を頼ってきたのにもかかわらず、悪いやつらの手に掛かって亡くなります。死に際に、丈太郎を気遣う言葉を残して死んでいきます。
本来ならば、助けられたはずの娘を二人も死なしてしまって、落ち込んだ丈太郎は、遊女に慰めを求めます。同じ女を助けられなかったのだから、女に救いを求めるのは間違っているのです。ここは、独り黙って耐えるべきなのです。
最初に登場してきた時に、丈太郎に抱いた人物像とはかけ離れていきます。言葉使いに品性を感じられないし、人としての魅力も覚えがたいのです。そして、傷だらけの身体をしているということは、つまりは、身体能力が高くないということを表しています。後々の物事の対処の仕方も手際が悪く、これでは、役目を果たせず命さえ危うくなりそうです。
また、銅屋久五郎が娘お恵の形見の藤の簪を丈太郎に渡したり、銃を作ろうと考えているのも不可解です。娘を助けてもらえなかったのにもかかわらず、丈太郎に心酔しているのが解せません。
争いの場面などの展開が読み辛いので、かなりの部分を読み飛ばして読み終えていますが、とても、じっくりと読める文章と内容ではないので、もう、読むつもりはありません。
本文中のイラストも表紙のイメージと全く違っていて、魅力を感じませんでした。あの何枚かのイラストのせいで、主人公達の好感度がかなり悪くなったのは確かなのです。