このレビューはネタバレを含みます▼
2015年に、小説すばるに一話目が『泣き娘』として初出され、2020年に、五話目が『探花宴』として初出された。終章が描きおろしとして追加されて、2020年に、文庫本として発行された。
私たち日本人にとって、隣国の中国は古来より遣隋使や遣唐使を派遣するなど、習うべき事柄の多い国として、縁がある国である。
この小説の主人公、燕飛は父母を亡くして、親類縁者に助けられるどころか、財産を盗られ妹や弟を悲田坊という孤児院に連れていかれるところを、周旋屋の通称、右聴大人に助けられ、泣ける特技を見込まれて、哭女の技術を仕込まれた。白い喪服を着て、性別を偽り女として哭女になり、葬儀の場に行き、死者の生前の行いを讃える歌を歌って、涙を流すのを生業にしている。都随一の哭女として名を馳せているが、世の人々に蔑まれる仕事ではある。
しかし、父母の生前は科挙の試験を受ける為に勉強をしていたほどの優秀な頭脳を持つ燕飛は、観察眼や話術の巧みさなどから、往く先々の葬儀に纏わる事件の解決の糸口を見出したり、関係する人々の心を慰める。
そうして、出会った青蘭は年上の友人として、先々を共にすることになる。また、母を亡くして悲しみに行き惑っていた年下の李澎は、飛燕に悲しみを分かってもらったことで、飛燕を慕い科挙を受けるための私塾で共に学ぶことになる。
五年後、科挙の試験に見事合格して官吏になることができた。そして、自分をこの場へと導く最初の生業をくれた右聴大人の葬儀で心からの感謝を告げる。