ネタバレ・感想ありしじみ河岸のレビュー

(5.0) 1件
(5)
1件
(4)
0件
(3)
0件
(2)
0件
(1)
0件
この作品は、二度と読めないかもしれない…
ネタバレ
2025年10月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み終えたあと、なんとも言えないやり切れなさに思わずため息をついてしまった。「なんでもいいから休みたい、手足を伸ばして、ゆっくり、いちど休めたら、それでもう死んでもいい」と語ったお絹。そしてそれが叶ったのが、身代わりの下手人として入った牢屋の中とは…。行政を頼ったり公共のサービスを利用したりできる現代とは違い、家族に何か問題が起きたら、その家族内でどうにかしなければならなかった時代。牢から出たお絹の、これからの暮らしを想像すると暗澹たる気持ちになる。日々生きることにも心底疲れ切っていたうえに、将来を約束した人をも失ったお絹が、「身代わりになってくれたら、家族の面倒はみる」と言われてそれを引き受けたのを、誰が責められるだろうか。山本周五郎の作品は何度でも読み返したいものが多いが、この作品は二度と読まないかもしれない。いや、正確には「読めない」かもしれない。あまりにやり切れなく、哀しい気持ちになるので…。
いいね
0件
レビューをシェアしよう!