ネタバレ・感想あり家守綺譚のレビュー

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上巻読了/下巻も素敵
ネタバレ
2025年10月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ (※レビュー書き直しました)
今からだと120年ぐらい前。
疏水と小さな山と川があり、山の向こうには大きな湖があるところ。
主人公の男性は庭に木々と水路と池のある、素敵な二階屋に住んでいます。
そこで仕事もするけれどゴロンと横になったりごはん作ったり食べたり、縁側で釣りしたり駅まで郵便出したり。「家守綺譚」なんだけどちよっと「家守生活譚」。
主人公が出くわすのは恋心を持つ庭のサルスベリとか亡くなった友人男性(あの世とこの世の境界を越えてくるけどホラーではありません)、陸だと平たくなってるカッパとかカワウソの血をひく男とか、多様性どころじゃないんですが。
でもこの主人公、学士として文筆家として、貧乏でもプライドと気概を持っているものの(明治の人ですものね)、素直でおおらかといいますか、ドキドキしながらもあるがまま不思議な生き物や出来事を受け入れていきます。
漫画版の上巻と下巻のあいだに原作小説を読んできたところ、小説もとても良かったですが、漫画だとビジュアルはもうそこにあるので、主人公のとなりで不思議を目撃している気分。そして表情や目線があるので主人公の優しさも、より分かります。穴ボコ状態のサルスベリやゴロー(後にスーパー仲裁犬になる飼い犬)のことをよく気にかけているし、カッパの女の子や七変化のタヌキにも優しかったしネ。
そして風景。疏水べり、山道、ススキの原の満月、幻想的な水辺、川と疏水の交わるところなど、ゆっくりゆっくり、読みたくなります。
最終話の彼の宣言「家を守らねばならない」はすぐにはピンとこなかったのですが、読み返しているうちーああ、きっとこの不思議な世界の、文明や開発が進むと追いやられてしまう者たちの居場所を少しでも守りたいってことねーそう思ったら胸があたたかくなりました。優しい物語でした。
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作家名: 近藤ようこ / 梨木香歩
出版社: 新潮社