本作は、読者に安易な救いを与えない物語だ。
読み進めるほどに、善悪や被害・加害といった単純な区分が崩れていく。
墨燃は取り返しのつかない過ちを繰り返し、
楚晩寧は守り方を、何度も間違える。
そのすれ違いは感情だけでなく、関係性そのものを歪めていく。
R18表現は含まれるが、甘さや刺激を目的とした描写ではない。
本作においてそれらは、人物同士の感情の不均衡や、
修復の難しさを可視化するための装置として機能している。
誰かを傷つけた事実は消えない。
それでもなお生き直そうとする姿だけが、最後まで描かれる。
読後に残るのは救いではなく、
「分かってしまった」という重さだ。
読む体力と心の余裕がある時に向き合ってほしい、
非常に誠実で、同時に覚悟を求められる作品である。