絵の好みはあるかもだが、決して見にくい感じではなく、物語に入って行きやすい親しみやすさがある。あり得ないような妄想満載の主人公に都合の良い設定からスタートする設定は青野春秋先生の特徴だが、非日常的な内容を日常的に違和感なくシュールに描き出している不思議な世界観に惹き込まれるように一気に最後まで読破してしまうことになった。
全体を通して感情表現を抑えた作風ではあるが、「理屈vs感情」を軸に理屈や論理を重視する社会風潮に対するアンチテーゼを描きたいような作品。
人と人との関わりや背景や理由や目的などが深く描かれることなく、「何となく」「それらしく」進めて行って、真犯人の動機やナゾに迫った結果のラストは、感覚や感情や感性に欠けるサイコパス的な人物というもっともらしいオチであったし、今後も彼らが蔓延り続けるという表現にもらしさが見受けられたように思う。
エピローグの中で救われる表現があったから一応はハッピーエンドの大団円ってことになるのであろうと思うので、そこも含めて一読をオススメしたくなる作品。