記憶喪失を扱った物語は、その記憶が何かを「知りたい」という希望で読み進められるので好きです。そして、どの物語も、辛く悲しいことがあったら、それらを知らない人や場所で過ごすことが 前向きになる 立ち直る方法という答えが用意されているように思います。同情されても、優しくされても、叱咤されても当時の感情が蘇って自傷してしまう、そうなる自分を責めることを止められないのだと、自分で自分を否定しないために。それにしてもおかしなものだ。辛いときには消えて無くなりたいと思うのに、記憶がなくなれば生きることにこんなにも前向きとは、人の感情とは厄介なものだ。イブ自身もカイルに又もや恋してしまっているのだからお気楽なものだ。記憶を失ったイブを引き取ってくれる人がいる幸運、なんて素晴らしい人たち、小さな子供がいる家庭ではこういうことは嫌うだろうに、しかし反面子守として体よく利用したのかとも疑ってしまう。私の下司さを知ってしまうところだ。それでも一人ぼっちで不安は拭えず、なところに「愛してくれる人」が現れるこんな展開がロマンスですよね。