フォローさんのレビューで知った作者さん。短編集を数冊読んでみましたが、『鍵』に続いて、こちらの表題作『緑の黒髪』も特に好きでした。最初、「緑(みどり)の黒髪」の意味がよく分からなかったのですが、この『みどり』には、「美しくて艶やか」の他に「若く 瑞々しい」や「未熟な」といった意味があるようで、作品を読み返して、納得です。
親の再婚により、連れ子同士で家族になったいづみとゴロー。2人は上手く家族をやっているけれど、いづみの髪が伸びてくると感じる漠然とした不安。過去のゴローの行為(いづみの長い黒髪を切った)の真意。崩れそうな均衡。その危うさがギリギリのところで保たれるのか保たれないのか分からないような描写に引き込まれます。未熟だからこその輝き(希望)のようなものを感じます。
短編集を読む限りは、あまりはっきりとした結論(結末)は描かれない作者さんだなと思いますが、曖昧なわけではなく、作者さんの中にある「答え」のようなものは感じることができるので、余韻のある読後ですがモヤモヤした印象はありません。シリーズになっている作品も気になるので、読んでみたいと思います。