今もまだ新シリーズが展開している甘やかな花の血族シリーズ。そのタイトルやエピソードの原点とも言える、昔の、まだ里が在りたくさんの女達が暮らしていた頃の夜十姫と青年との恋物語が読めます。
シリーズの最初だった無印(朝露のストーリー)やその後のシリーズでの彼女達は、里が無くなってからのお話なので夜十姫がどういった存在かも知らず、高塚の男に狙われて戸惑う状況がデフォルトになっていたので、読者からしても主人公と同じように謎に思う部分が多かったです。
ですが、この作品を読むことによって本来の夜十姫はどういった人達だったのか、高塚家とどういう関係を築き、どのような暮らしをしていたのかが自ずと見えてきます。
また、今回は夜十姫の事を知らない高塚家の妾腹の子・榊が、夜十姫の里の長である氷雨と出会って初めて恋をするというエピソードで、これまでのシリーズとはいろんな意味で全然違うストーリー展開だったのが新鮮でした。
夜十姫である氷雨達と榊とでは考え方も生き方も違うけれど、そこから学ぶこともあり、結ばれ得ない存在だとしても本気で愛する。そんな、切なくも甘い昔の秘められた恋物語が読めて嬉しかったです。
全シリーズどの男性も魅力的で、どの夜十姫にも幸せになってもらいたい。そう思わされる作品です。この、昔の夜十姫を知ることのできる今作を綺麗に一巻で纏めている作者さんはやはり流石です。でも、榊も氷雨も魅力的だっただけに、2巻分くらい描いてもっとイチャイチャしてる所が見たかったなと個人的には思いました(笑)
もちろん、他シリーズを読んだことがなくても今作からでも大丈夫です。このシリーズが気になってる方は、まずは一巻完結のこの作品を読んでみてから、気になったら無印(朝露ストーリー、4巻完結)を読んでみたら良いと思います。大分年月が流れてからの、普通に暮らしていた夜十姫である朝露と、高塚家との物語を見ることができます。