HQに多すぎる誤解、罵倒、子ども、そしてお相手はギリシャの富豪と来て、偶然(?)の敵対的再会。
HQ材料各種揃えていても絵がかなり丁寧で、そこ好感。メインキャラ以外は人物が相対的に少し影が薄いが。室内、子どもとの風景がしっかりと描き込まれ、雰囲気が優しい。横開きで読むべき本。その、見開きひとこまシーン二箇所、共に素晴らしい。
男性のビジュアルがギリシャ人イケメン要素を備えていることは明らかだが、見た目私のタイプではなかった。そのことは星数に入れていない。
それは、出会った頃のプールの全身像、再会後の朝陽を逆光にしたスーツの上半身像など、要所要所いずれも、絵的には素晴らしい場面だったから。
このストーリー、ヒロインに仇なすものは全て謝罪させている。
それでも読み手がしこってしまうのは、ヒロインが受けた仕打ちと、バランスは取れていないから、だと思う。
許しというのは高潔な行為で美しいものだし、登場人物達を最後に汚さないで終わらせる方法なのだが、読み手のこちらはわだかまる。
ただだからと言って、その処罰感情の矛先として、この手のストーリーでは彼がしっかり確認していれば良かったのに、というこちら側の希望は、怒りと失望で目が見えなくなっている当人に余裕なく、期待出来ない。誤解に基づくストーリーを展開させたい制作意図では、そこを考え及ぶ冷静さは必要とされない。
裏切られた、騙された、そんな人間だったのかとの絶望、一瞬で彼は頭に血が上り、という構図で、ヒロインを不幸に突き落としてから、気づきの場を与えて、そうだったのか、と悟らせる構図に、既視感一杯。
そんなありふれ題材のあるある展開ながら、それでも、よく描いているな、と思えるから山田先生の仕事に星。ストーリーは、ヒロインに逆境を、試練を、生活苦や母子家庭の子育ての苦労を、思い切り与えながら、やっと幸せをもたらして(やる)、というあざとくも利用されやすい構造への、「飽き」「工夫への不足感」を越えられない。原作ものの限界なのだが、コミカライズ担当者は、その枠を普通は乗り越えられない(アレンジし過ぎは禁じ手と思料か)ので、そのやるせないマンネリズムに、仕方なく星は満点としなかった。