このレビューはネタバレを含みます▼
鍵師という、いままで、ありそうでなかった「職人モノ」です。
名作…とまではいかなくとも、着眼点に勝利があったというか、これまで、ほとんど知られていなかった、鍵業界の、表も裏も描いたところに、まずは読んでみようと、人を惹きつけるものがあります。
スキル面では、感心させられることばかりです。
ただ、ちょっと設定に難があったのは…
主人公ロックが、いくあてのない女子を拾って、店番にさせるのですが
この娘(二十歳くらい?)、べつに特殊能力を持つわけでもなく、とても相棒といえる立場ではなく、ただの店番にすぎないのに
ロックが「依頼主」である暴力団の本部に出向くとき、それに同行したり、
彼の大恩師が死んだとき、葬式に一緒に出たり
なんと、某国の大使館からの依頼を受け、そこの正式なパーティに「パートナー同伴」を条件点けられているわけでもないのに、同行できたり
かなり、VIP待遇です。
なぜ、ここまで?と思うほどに
特別に、ロックが好意を持っていて、女として扱いたいがゆえに…というわけでもありません。
まあ、CHの香と比べたら、100階級は違うくらいの、フツーの、何もない、ただの店番の娘です。
そこに、ちょっと、違和感がありました。
また、たまにですが、依頼主の側に、かなり人格的に問題がある場合でも、条件次第で仕事を引き受け、依頼者にとっては面倒な存在である「善良な市民」を、その鍵のスキルと、メチャクチャとしか言いようのない「法解釈」をコラボして浴びせ、結果として、クズな依頼主の利益に協力し、善人が泣きを見るという展開もあります。
まあ、主人公は、あくまで裏も表も知り尽くした、腕一本で勝負の「職人」であり、正義の味方ではないので、無理もないという見方もありますが…
たとえるなら、新宿セ〇ンや、カ〇キの不動などのように「本職」の知識とスキルのほかに、時々、かなり正当性に裏付けられた、法的知識をも駆使して、弱い立場に置かれた依頼主を助けるのとは、ある意味「真逆」で、自分(と依頼人)のいいようにしてのみ解説してだまらせる、レベルの低い法知識の駆使を見せられるのは、ちょっと興ざめしてしまいますね。
作品そのものは「新分野」であり、さまざまな、知られざる技術のようすを見ることができる点では、おもしろい作品です。