ストックホルム症候群でないとどうしていえるか。物語の背景にとても興味深く読んでいたのだけれど、オリビアとアジズの関係についてはピアノがその絆になっている事は理解できても、カリムとエレナについてはどうなのか。カリムの出自について真実を葬ることは良い選択と言える。国政の安定がまず第一なのだから。しかし、アジズの考え方が浅はかだし、策を講じる能力に些か疑問を感じる。行き当たりばったりでオリビアのほうが主導しているように読める。これでは、アジズの魅力が伝わらない。オリビアの行動力はアジズに惹かれている事が原動力となっているらしいが、それも今一つ伝わらない。母と子が花をさしだす場面を見せたのだから、ダニエルを想い、その様な幸せな家庭を壊さないために自分が出来ることは何か、という展開のほうが納得できたと考える。あれやらこれやらと、国政事情を抱えている事を匂わせている割に納得できる筋書きが用意されておらずモヤモヤ感が払拭できない。投票においてもいきなり降って湧いた提案で、しかもその中にテロ首謀者がいるとはいきなりで片腹痛い。エンディングに至ってはダニエルと養父母を迎え円満さをアピっているが必要なかったと思える。