ラウルは、任務を終えて 何もかもをリセットし 新しい人生を始めようとした矢先、それは起こった。死と一直線につながる空間から脱出し、山深くの教会に身を隠した彼は、意図したものではなかったが2年前教会に置き去りにしてしまったエマと再会した。エマにしてみれば事件に巻き込まれて亡くなったと 考えるしかなかった彼との再会に 困惑し喜びそして理由を知るべく彼を追いかけた。作中は進展しない2人のやり取りが、3日という時間枠で見せられているが、彼の物思いが色濃くは書かれていないため、その過酷な状況に思いを馳せることが困難だった。任務の為だったとはいえ、男でも恐怖や痛みから泣くことは有るはずなのに そこを見られないから流れるままに読むだけになってしまっていて残念。RCMPを希望した事よりも、それによって降りかかった現状の苦悩と後悔を見たかった。また、雪深い山中なのに、かなり軽装に見えるけれどそんなものなのか?慣れ?一方エマは 2年前の真相を問い詰めていたのに、彼の服薬姿に考えを変えるのだが、その時の衝撃が薄くて いきなりの方向転換に戸惑った。「愛している」けれど、彼の事は何も分からない そんなエマの不安が多く大きく私を支配していた。もちろん そういう意図の物語なのだろうが 敵を騙すにはまず味方から というように彼の葬儀をした時 その去就は決したが、エンディングで「死ぬ前に一矢だけでも報いてやるわ」という彼女の行動に共感した。