ネタバレ・感想ありホーキーベカコンのレビュー

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いかに少女が残酷な残忍な成長を遂げたか
2023年12月17日
変態、谷崎潤一郎の「春琴抄」は、映像化もしている。
主演 山口ももえの其の映画は、美しくこの作品ほど佐助が美しくは、ない。
こいさんは妊娠出産して生まれた子は里子に出される。相手は言わずと知れた…口を割らなかった。
その不遇と優雅で豪商の娘で麗しい「こいさん」
巻き込まれて行く不遇ですら美しい。
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究極の美へと堕ちていく感覚
2023年7月22日
小説『春琴抄』の独自解釈に新規エピソードを加えた傑作。
あえて細かく描写しないことで表現されていた原作とは違い、各キャラクターのエピソードや変化する関係性を丁寧に描いている。一巻時点ではうまく琴のしてほしいことが察せられなかった佐助が、三巻冒頭では自然な流れで琴の心を察して応えている場面など、細やかな描写が非常に心に響く。
そして何より絵柄がめちゃくちゃ奇麗。原作の耽美さを視覚的に表現することに成功しており、作者さんの技量の高さには感服する。
何度も読み返して世界に浸りたくなる素晴らしい作品。
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谷崎の毒に侵されるような感覚にゾクゾクッ
ネタバレ
2022年10月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 谷崎の春琴抄といえば盲目の少女春琴とその手を引き世話をする丁稚の佐助の不思議な関係…子をなしながら師弟感覚を維持し春琴が不審者により顔面に火傷を負わされるや佐助が盲目になる道を選ぶという…を描いた作品。マゾの谷崎が描くM男を観たいと思ってその舞台作品を観たところ、意外なことに佐助の春琴を恋い慕う気持ちと、それが故に自己犠牲を払ってでも春琴と同じ世界を共有することに喜びを感じるという純愛に感動してしまったのです。
でも、子を不要物のように扱う春琴に、同性として違和感が。これは、理想のSM関係にある男女の、2人だけの濃密な関係を描くために谷崎が造形した気質なのかな?と。その違和感の根拠を確かめるために原作を読んでみると、春琴の美しさは繰り返し描かれているのに、佐助が視力を失う、芝居でいえば見せ場になるシーンの淡白さに「お、お前、そんだけかよ谷崎〜!」と大作家先生をお前呼ばわりするほどドMっぷりに衝撃を受けたり、それまでツンツンツンでようやくデレた春琴がいるのに、佐助は生身の春琴を通じて観念の春琴を愛していたという下りに至っては、え、これ純愛ものではないの?もしかして春琴に佐助が操られていたのではなく、佐助が春琴を作り上げたの?とホロッとさせてからゾクッとさせる谷崎文学のありようの凄まじさに絶句したのです…。いや、凄いよ谷崎。好き…。

と春琴抄の原作を堪能したものの、佐助と春琴の関係は食事、排泄、夜の世話…と師弟関係の下のSMと官能が満ち溢れたものであるはずなのに、それらのシーンは読者の想像で補うスタイルに日々BLを読んでいる自分がすこーし物足りないと思うのは仕方がない。
そこで出会ったのが、この「ホーキーベカコン」。これは春琴が愛でる鶯の鳴き声をタイトルにしたものなのですが…これが原作に輪をかけて凄かった。何が凄いかというと、自分が見たかったあれやこれやが、原作を補って余りあるほど、詳しい描写や原作で1行で記されている内容すらエピソードに落とし込んで描くことで原作の密度をぐっと上げ、曖昧だった佐助の心象風景も描かれていること。圧巻なのは佐助が死際に天女のような春琴を思い浮かべながら自分は…人外?それがM男の本懐なのか?春琴像もツンを貫いた造形で佐助の理想とする春琴を体現したよう。谷崎に読ませて感想を聞きたく思うほど濃密な3巻。原作と対比して読むと更に良。谷崎ファンなら是非
読む度に見えてくるものがある漫画
ネタバレ
2021年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 谷崎潤一郎の春琴抄をベースに漫画にしたもの。
あくまで春琴抄そのままを漫画化ではなく「ベース」にしてます。でも谷崎の耽美さ、行き過ぎた女性信仰の描写は申し分ない。

最後まで見た感想として、この物語は春琴と佐助の話がメインではなく、その伝を見聞きし想像した私(順市)が自分にトレースしつつ物語を描くまでの補填過程を描いた話です。

谷崎潤一郎は過激な女性愛で有名ですので、作家や恋人としての人格(順市)と女性を信仰するがゆえの女性を理解する人格(長髪着物姿のキャラ)
そして語り部の春琴伝作者を想像力で作り出し、耽美ながらも悍ましくも思う真相を補填する……佐助と種類が違いつつも同じ部類の男だということが分かります。

この作者さんで痴人の愛とかほかの谷崎潤一郎作品の漫画化してくれないかなぁ
三度の飯より美少女美少年!美少女美少年!
ネタバレ
2021年5月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 漫画版→原作の順で読了しました漫画版の好きな場面が当然原作にもあると思ったら全くなくて驚きです漫画版は原作をベースにたくさんの「あったかも」が詰められ膨らんだ物語だったんですね。順市(谷崎氏?) と恋人(春琴のモデル?)も出てくる現代パートがあるおかげで、漫画や小説の中だけにいた春琴が実際にいたのかもと思える構成が素敵です現代パートは核心の部分を想像に委ねる形なので鵙屋春琴伝を読んだ作中人物の考察同様に、ホーキーベカコンを読んだ人の数だけ感想があるのかもしれないとウキウキものです。読者を信頼してくれたからこそのお美事な結末に辿り着きましたありがとうございます引っ掛かった方は作者さんのアンサーがあるTwitterをぜひ。それにしても読後改めて思うのは「美」は生きる上で必要ではない要素なのに、美を感じると死にそうになったり生きる力が沸いてくるからたまったもんじゃないということです。また読み返してこの豊かな気持ちを味わおうと思います。私の美学は表題の通りです。
読めば読むほどズルズル引き込まれていく
ネタバレ
2020年11月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 原案の小説「春琴抄」の難解な部分が軽く取り払われ、代わりに異常な性的倒錯の表現が耽美な描写で綺麗に強め上げられ、さらに、物語の中にある程度美しい独自解釈が付け加えられることによって、多くの人にとって読みやすいにも関わらず、この作品にはとんでもない深みが生じています。
読後、自分の中の何かが間違いなく歪められます。ここまで漫画作品で衝撃を受け、色んな意味で感動したのは生まれて初めてかもしれません。
何も言わずに一度読んでみるべきだと思います。こんな世界もあったんだということに驚きます。

キャラクターや背景の絵がとても綺麗です。
台詞も多くはないので読みやすいです。
とにかく、様々な点からお勧めです。面白いです。
素晴らしい
2020年5月19日
最近知ったこの作品。とても好きです。一言では言い表せないほど胸に刺さるお話だと思いました。また忘れた頃に読み返そう。笑
いつも心に残っています
2020年4月26日
原作は知らないのですが物凄く印象に残る作品です。ヒロインの性格が明治生まれの亡き祖母そっくりでフェチズム抜きでこの時代の女の人はここまで気を張った強さが無ければ生きていけなかったのだろうなと感嘆。作品はフェチズムの嵐です。かなり読み応えあります。
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すっきりした絵がかわいい
2019年8月17日
登場人物がみんななんらかの部分で偏執的で変態です。でも、人間ってそんなものかもしれません。それと、谷崎の女性像ってやっぱこうなるよね、、と感じました。

こちらの漫画も、春琴の美しいからこその恐ろしさや脆さと、彼女を取り巻く人間のごたごたがすっきりした絵柄で描かれており一気に読んでしまいました。続きが気になります。
大谷崎ファンを裏切りません
2020年1月8日
谷崎潤一郎の代表作「春琴抄」をベースにした作品です。
大谷崎の耽美、甘美、倒錯的な作風を余すことなくきっちりと表現していると思います。原作が長編ではないのでオリジナルエピソードが入っていたり、原作にはない作者の解釈が入っていたり、原作より春琴の幼女性を強調していたりはしますが十分受け入れやすいレベルです。
ただ、あの男装のオリキャラはいるかな……という印象を最後まで持ちました。設定も強めだったので、もしかしたら作者の他の作品に出ているキャラかもしれませんが…。「私」とオリキャラの場面になるたび、こちらの世界に引き戻されてテンポの悪さを感じました。そこだけ原作の雰囲気を損ねているように思います。
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