表題作は前中後編と巻末おまけで、108+5頁、同時収録「科学者と幸せな薬」26頁(2015年)、「待宵の月」14頁(2017年)。
いずれも捻りがあって、しかもそのためだけにストーリーが徒に回っているわけではなく、起伏に無理がなくてダレもない。表題作の、眠りから目覚めさせるマジックが二重に仕掛けられているのは、読み終わってみればニヤリ、だが、「科学者と幸せな薬」には完全にやられた。作者あとがきの「ミスリード」、実にお見事で。「待宵の月」では14頁しかないことが読んでいる最中には少しも障害ではなく、あとになってから実は語っている内容は豊かでありながら、話の種明かしのなんともいえない上手さに、本書3回目のノックアウト。
絵も少女漫画的に満足しているし、3作品が被りあわない為、広がりのある作品集となった。
私も「ボクと姉の結婚」からやって来たのだが、このストーリー作りの上手さは、土台がオーソドックスでもこれだけのことが展開できるのだよという確かな腕を見せつけてるのと同じ、十鳥さる先生にはこれからも末永く活躍されて欲しい。