明日迄1巻目無料の為、普段避ける高め価格帯のところ、試し読みで引きの強さもあり購入へ。毎回14頁で最終49回迄、短い話でも興味を喚起する腕を磨かれた、ということだろうか。タイトル付けのセンスが良ければ、もっと興味をもってもらえる作品だったかも知れないのに惜しい。
私はタイムスリップ物は好きなジャンル。そしてこの作品には、ピリッと主人公の放り込まれの戸惑いが挟まれて、ご都合ばかりでない人間関係の再構築をする主人公の模索が読みどころ。タイムパラドックスを最小限にする作者の抑制が、最後までストーリー展開に締まりをもたらして、読後の安定決着感がある。タイムトラベル物がよく抱える、未来からの闖入者による過去のとっ散らかしが整理されていて、自己都合による無責任なかき回しして自己都合で去ったりしていない。この種のストーリーに付き物の未消化なものを禍根とせず、しっかり回収して行く意図(作劇上の流れの為だけだったのかもしれないが)は読者フレンドリーで、夕先生の姿勢を見た様な気になる。ただ、伊藤さんは呪いだけは記憶してそうなんだが。。
絵もスッキリ線で、人物や背景の出し方が自然。夢でも見ているかと考える主人公の世界に、しかも、違和感が無かった。ストーリーに間延びなく綻びも無く、急な打ち切りは無かったと思わせるジャストサイズの4巻に思えた。逆にこの短い各話の連載方式と巻数では、スケール感の方には限界があった。難点を付け加えるとすれば、大き目のコマが割と多いのは全体にガラ空きっぽくなり、そういう点は少し手抜きに見えて気になる。
数作品の過去の読み切りが収録されており、いずれもちょっと不思議な事を扱っていて、作風の一貫性を感じさせる。ただ、ストーリーにどこか使われ古しの印象あり、もうふた味位は独自性欲しかった。
どの作品名も、もっとキャッチーな方が良かったと思う。画風が初期のままだったら目が大きすぎて私は買わなかったことだろう。
(美月のアップは不明瞭な表現との意見を見たが、話の方向をはぐらかす目的でわざとそう描いた、と思うので、私はむしろ、話にミステリー要素がまぶされた、と受け止めた。)
4.5のつもり。
後日1巻目無料の期間限定が5/2 迄に変わってた。
次作は、より表情の豊かな、より大道具小道具的描き込みを味わいたい。