他の短編集と比べると、吹き出すくらい笑ったり、内容が分かりやすかったり、全体的に読みやすかったです。かといって薄っぺらい話という訳ではなく、読後は心に何かが残るお話ばかりです。
「センチメンタルを振り切る速度」これを初めて読んだ時は、青春の後悔がサラッと短くまとめられた、まぁよくある感じのお話なのに、何かが引っかかるというか、「何でみんな歩かないのかな?歩くという概念が無い世界のお話ってことか、でも何の意味が?」と喉に小骨が刺さったような読後感でした。しばらくモヤモヤしていて、ようやくタイトルに意識が行って、「あ、そういうことか~」と笑いました。歩いているのを走らせるだけで、センチメンタルが吹き飛ぶなんて誰が想像しただろう。シンプルなだけにツボりました。
個人的に一番面白かったのは「どつきどつかれて生きるのさ」でした。話の筋はよくある感じなのに、ボケとツッコミに特殊な設定を加えて日常の中に紛れ込ませるだけで、こんなに笑えるものなのかと心底驚きました。「センチメンタル~」と似てるのですが、こちらの方が完璧なまでに特殊設定が現実世界に馴染んでいて違和感がないです。「センチメンタル~」は違和感が大事な要素だと思うので、それはそれで完璧なんですけども・・・。それにしても、ここまで違和感なく読めるのは、大阪弁だからというのも大きいでしょう。大阪の人達って、呼吸するようにボケてつっこんでいますよね。こういう会話が日常的に繰り広げられていたら毎日楽しいだろうな~。