後見人設定もHQによくある設定なら、その後見人が素敵、というのもよくある設定。
HQ男性には、自分になんらかのハンデがあってヒロインに別の男性を勧めるのも多い。
HQは結末がハピエンと決まっている上に、ある程度定型化された設定やストーリー進行、よくもまぁ飽きもせずこれだけいくらでも類似作品が世に出てくるものだと思うのだが、一種の心のビタミン剤的に読みに来て、ホッとして読み終える平和な読み物。逆にものすごい読み応えを期待する人には軽く感じる危険性はある。しかしイージーリスニングも重厚なクラシックも音楽の仲間にあるように、このHQコミックも恋愛物+ハピエン特化の、消化のいいコミックとして手軽。価格が相対的に安いとは言えない点だけがウィークポイント、手を伸ばすには厳選が必要だ、となる。
津谷先生の絵はそんなときによく応えてくれる温かみと穏やかさがあって、作品の中にはその時代っぽい雰囲気がある。貴族階級上流階級が舞台であることを納得させる上品さもたたえていて、読み手のこちらの目に優しいのだ。
ストーリーはサスペンスが入って穏やかとは程遠い。その事件裏の事情が明らかになるのはクライマックスで。
一般的にHQコミックは1冊完結が原則なので(前後編とかシリーズ物は有り)、原作を読む人には物足りない浅い展開で終わることも多いようだが、コミック単独で読むスタンスで行くと、ひととおりのヤマ場を乗り越えて幸せになるメインキャラ達を見届ける頁数としてはよく収めていると感じている。
そんなわけあるかい、といったようなエピソードがHQにはままあるのだが、それは作り手がドラマを見せたい、という意図で用意されたという意味では、HQ特有の現象とも言えないのではないか。むしろ、主人公がたくましかったり、読者が経験出来ない世界を具体的に見せてくれるため、きつい試練やピンチを乗り越えてつかむハッピーまでのヒロインの心情に寄り添えれば楽しいひとときである。
コミカライズを担当されている漫画家は沢山いらっしゃるが、津谷先生は丁寧な作画のみならず、台詞の採り上げ方が自然であるので読みやすい。