とても骨格のしっかりしたストーリーで 絵にも安定感。HQは白っぽい絵の作品が結構あって、時々、お金の無駄遣いとしか思えない物がある。失敗したくないから何千と世の中に出ていても手に取るのは厳選したいのだ。値上げもしているから余計慎重になっている。しかし尾方先生の手になるHQコミックスは、絵に物足りなさを覚えさせない力量で、どの作品も絵に失望したことがない。109頁のヒロインは幼なすぎて、この絵だけは受け入れがたいが、総じて確かなレベルの絵が多くの事を伝えている。丁寧な仕事が話の盛り上がりを支えて、話に厚みが出来ている。
本作は、私の望むレベルを軽々クリア。子供は子供に見えるし、沢山の人物がキッチリとキャラ付けされている。そして、ヒロインの受けた衝撃は、私にも読んでいてとても辛かった。あんな親、なのに、あんな親を親と頼って生きてくるしかなかった。期待に沿おうとして健気な彼女は頑張っていたのだから、涙が出る。親の望むように育つことを目指し、ずっと頑張ってきたのにあれはない。そして梯子は外された。愛されたくて過ごしてきたヒロインのこれ迄を思うにつけ、親を選べない子の辛さが私の心に押し寄せて、そして、自分は間違ってないと手前勝手な理屈で悪びれもしない姿に、 何故だか現代の不幸な子どもを巡る直近の事件をダブらせて、悲しみが煽られた。それに加えてピーターのやつ、という感じだ。この苦しみを乗り越えた先には、きっといいことがある、そう思うしかない。HQは報いてくれる読み物だから。
世の中の不幸な親子関係のニュースを象徴させる、子のためになど少しもなっていない親の子どもへ強いてきたこと。
衝撃の日、余りな仕打ちを大勢の人の前で受け、父親からの二次被害。身内なのに庇われない。人でなしの親。最悪のプライド崩壊事件。涙しかない。両頬を打ちのめされたようなヒロインへの彼アイボの心の看護が真に素晴らしい! 大体、そこでこの一冊全てを通しで振り返ってみても、もう、彼の包容力で埋め尽くされていたことに、今さら改めて気づかされる。
しかし、羽も羽も揃っていないとして彼は異性としての感情は封印して。
そして無邪気な刺激に対して感情を踏みとどまらせる大人対応。保護者としてその役を全うしたいとする高潔さ。彼の存在感は好ましくなっていくばかりだ。
早く二巻目いかなくちゃ、と、ここは駆り立てられる。