いろいろ描きたいことがありそうで、それをあるいはエモく、あるいは鋭く描く腕は持っているけど、バラバラな感じ。〈あれっ、前は〇〇って描いてたのに…??〉〈えっこんなに掘り下げといてそれだけ…??〉などと感じることが多い。
人物の心理を丁寧に描いているが、その心理を生んだ状況とマッチしていないので、せっかく細かく描いても宙に浮いた感じがする。登場人物のセリフや内言で心理を説明することが多いのは、少年誌だからというだけでなく、心理と状況が必然としてつながっていないのを作者の理屈で強引に結びつけようとしている面があるだろう。言ってみれば人物が作者の代わりに言い訳をしているのであり、人物が生身の人間ではなく、作者の人形のように感じられてしまう。もっと行動や表情、状況それ自体から読者に読み取らせるようにした方がいい。
個々のエピソードをエモく描く能力は高いので、この人の読み切りや短編を読みたい。