自身がたいへん興味を持っている戦時中の海軍航空隊の物語である上、人気BL小説シリーズのコミカライズだということも存じ上げています。ですが、作画に対して多大な嫌悪感があり、こちらだけはどうしても受け入れられない。親類に当時の飛行機乗りがいたことも相まって、内心腹立たしい思いでいます。
主人公が飛行服・飛行帽姿なのに、常に鬱陶しい長い前髪を垂らしている。これは100%有り得ません。
飛行機乗りにとって目は命。視界を遮るような姿や行為は絶対にタブー、即刻生死に関わります。当時の写真や映像で一目瞭然ですが、誰一人として前髪を垂らしている方はおられません。
飛行帽から長い前髪(=視界不良の元=死に直結)、現実世界なら主人公は飛行機に乗る資格ゼロの大馬鹿者。そんな噴飯物の描写が平気でされていることが許せないんですよね。ファンタジーならともかく、実際の戦争がテーマでしょう。
あぁこの作品は最も曲げてはならない基本的な史実を無視し、取るに足らないビジュアル面を重視するのかと。それと同時に、飛行機乗りという存在が軽んじられているようで気分が悪くなりました。
主人公の搭乗機は“月光”だそうですが…。私は実在の撃墜王で同じく“月光”を愛機としていた海軍中佐と、その方の壮絶な最期を存じ上げています。この作品の原作者様も、知らないはずがないと思う。
だからこそ余計に許容し難いのです。作品紹介での“生き残りをかけた戦い”という文言を見た時に、口汚くて申し訳ないですが「ふざけんな」と思ってしまった。文字通り命を懸けて戦い散った、前述の海軍中佐が思い浮かんだからです。
以前は小説の方にも興味があり、いつか読んでみたいと思っていたのですが。このコミカライズ版の作画を見たことで、一気に熱が冷めてしまいました。
その後試しに一度だけ小説版をクリックしてみるも、予想はしていましたがこちらとキャラデザが同一。思わず落胆の溜め息…。
きちんと考証が成された作画なら間違いなく手に取っていただろう作品。本当に残念でなりません。