歳の差恋愛ものの中でも、異質で絶妙な作品。
都合よく十代女子に惚れられたり居候されたり求婚されたりしない。男側が流されるままになし崩し的に道義的ラインを踏み抜かない。惚れられるだけの魅力が認識不可能であったり、周囲の人間が思考停止Botの如く歳の差二人を無条件で認め祝福したりしない。社会通念・常識・社会的な倫理とか価値観とかから明らかに逸脱した関係性・恋慕に対してきちんと苦悩したり戸惑ったりする。こういったことを守るだけで世の歳の差恋愛ものはある程度の気持ち悪さ・嫌悪感から脱却できるのだが……。閑話休題。
既知の恋愛に対してありきたりな絶望と悟った風な諦念を抱く中年男と、未知の恋愛に対して高潔な理想と漠然とした不安を抱く少女。今は熱が冷めた男と、年相応に熱い思いを抱く女。一方では何かが始まって、もう片方は始まる前の凪そのもの。このメイン二人の日常における対比が、心の機微の表現が、上手い。2巻以降の展開に期待。