罪人の村「谷の底」では10才になると、竜に選ばれることで谷の外の世界へ行けるチャンスやってくるーーー
臆病な10才少女の冒険、とくれば、柏葉幸子さんの右に出る方はいないですねえ!!!
「霧の向こうの不思議な町」が宮崎駿監督の目にとまり、原案として「千と千尋の神隠し」に生まれ変わった話は有名ですが、あの千尋の精神が柏葉作品には息づいている気がします。臆病で、場に流されやすくて、冷たくされれば傷つき、ときに無鉄砲で…、だけれど、前を向いて生きていく成長する強さを持った少女。それが、本作の主人公の姿です。
柏葉幸子さんの過去作には「とび丸竜の案内人」という日本に住んでいる少女のもとに竜がやってくる児童書があるんですが、その原因がマルメロ(かりん)を冷凍して季節外れに食べたから、というもので、それに憧れて、10才頃は花梨を冷凍庫にせっせと保管していました。いつか竜がやってきて大冒険へ連れていってほしかった。その気持ちを思い出して、この漫画を読んでいて、締め付けられるほど懐かしかった。いまのところ、千尋の働きだした温泉郷のように、冷たい大人が多く登場して、主人公は苦労の連続を強いられています。故郷をさして「罪人の村」とされているのは、今の支配階級(斧の民)に対し、祖先が敵対する勢力(弓の民)だったからです。いまでは部族全体が隔離されて、下層階級として扱われています。故郷から離れた土地で、谷の子、と呼ばれて、自分の名前を奪われたような寄る辺ない立場になってしまって心細いだろうに、庇護をしようとする大人もおらず、食糧事情も自力でなんとかしようと踏ん張っています(ただ、食堂にいけば食べるものはあるのに、怖いひとがいるエリアには近づきたくない、と選択肢を狭め、自分の意思を固めているところが…、幼い子供の思考の解像度が高すぎる)。さらに外へ、竜巻の村という賭け事を目当てに悪人がつどう集落へ行く3巻でも苦労しそうですが、楽しみに刊行を待ちたいと思います。