このレビューはネタバレを含みます▼
デビュー作とのことで。
とても静かに進む話。たぶん、会話が少ないからか。
美大で染色を専攻する正臣。目標を見失い、休学して帰省したとき、和装が似合う古本屋の壱加に一目ぼれし、自分に着物を染めさせて欲しいと申し出る。
すげなくされるも、通い詰め常連とも仲良くし、アプローチする。壱加は、正臣に尋ねる。「どっち?」と。
壱加はゲイ、正臣はバイ。
バイにトラウマがあり、2年引きずっている。
コミュ障で、人付き合いが苦手。
中学のとき、思いのままに告白して、気持ち悪がられ、一夜にして周囲からのいじめを受けることになった。
父親にも心配をかけたが…
人と距離を置く。踏み込まない、踏み込ませない。
その中で出会った人は、父親が倒れたときにも寄り添ってくれ、心を開く。
が、女性相手に浮気をされた。
ゲイではなかった、嘘だった。
それでも、くれた着物を手放せない。
古本屋を営みながら、世捨て人のような生活をする壱加の前に、年下の明るく物怖じしない正臣が現れる。
自分を好きだという。信じられない、信じない。
身体を重ねようとして、上手くいかなかった。
正臣が決意して着物を染めに大学に戻る。
毎日送られてくるメッセージ。
正臣が思いを伝え続けるうち、日薬は効果をあらわしていく。
近所のばあちゃんがナイスアシスト。
正臣は見事な染めを成し遂げ、壱加に贈る。
壱加のことだけを考え生み出した作品。
正臣の心は伝わる。
いつも思う。なぜ、ゲイというだけでいじめになるのだろう。告白された相手が受け入れないのは、ヘテロの告白も同じ。それを周囲や他者が何か言う権利があるのだろうか?人権って、そんなもんじゃないと思う。
壱加の、ヘテロやバイを怖がる気持ちはわからなくはない。選択肢の多い相手は、それだけで怖い。
だけど、ばあちゃんが言う通り、ひとり一人違う。
人間が違うのだから、選択も思いも異なる。
それが、伝わってよかった。
ハピエンです。
エチらしいエチはなし。
それらしい描写はある。
終始、静かに進む話。
陰湿ないじめのシーンはある。