ネタバレ・感想あり春霞に染まるのレビュー

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静かな物語
ネタバレ
2025年11月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ デビュー作とのことで。
とても静かに進む話。たぶん、会話が少ないからか。

美大で染色を専攻する正臣。目標を見失い、休学して帰省したとき、和装が似合う古本屋の壱加に一目ぼれし、自分に着物を染めさせて欲しいと申し出る。

すげなくされるも、通い詰め常連とも仲良くし、アプローチする。壱加は、正臣に尋ねる。「どっち?」と。
壱加はゲイ、正臣はバイ。

バイにトラウマがあり、2年引きずっている。
コミュ障で、人付き合いが苦手。
中学のとき、思いのままに告白して、気持ち悪がられ、一夜にして周囲からのいじめを受けることになった。
父親にも心配をかけたが…
人と距離を置く。踏み込まない、踏み込ませない。
その中で出会った人は、父親が倒れたときにも寄り添ってくれ、心を開く。
が、女性相手に浮気をされた。
ゲイではなかった、嘘だった。
それでも、くれた着物を手放せない。

古本屋を営みながら、世捨て人のような生活をする壱加の前に、年下の明るく物怖じしない正臣が現れる。
自分を好きだという。信じられない、信じない。
身体を重ねようとして、上手くいかなかった。

正臣が決意して着物を染めに大学に戻る。
毎日送られてくるメッセージ。
正臣が思いを伝え続けるうち、日薬は効果をあらわしていく。

近所のばあちゃんがナイスアシスト。
正臣は見事な染めを成し遂げ、壱加に贈る。
壱加のことだけを考え生み出した作品。
正臣の心は伝わる。

いつも思う。なぜ、ゲイというだけでいじめになるのだろう。告白された相手が受け入れないのは、ヘテロの告白も同じ。それを周囲や他者が何か言う権利があるのだろうか?人権って、そんなもんじゃないと思う。

壱加の、ヘテロやバイを怖がる気持ちはわからなくはない。選択肢の多い相手は、それだけで怖い。
だけど、ばあちゃんが言う通り、ひとり一人違う。
人間が違うのだから、選択も思いも異なる。
それが、伝わってよかった。

ハピエンです。
エチらしいエチはなし。
それらしい描写はある。
終始、静かに進む話。
陰湿ないじめのシーンはある。
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作家名: 相田史
ジャンル: BLマンガ
出版社: 一迅社