藍先生の描く女性は子どもじみていないから、読んでいてくだらなさを感じなくて良い。ヒロインの考える内容も、メインキャラ二人の会話も幼稚ではなかった。相手への配慮や、先々のことをキッチリ考える思慮深さが、とてもいい。
やはり、黒使いが巧い。夜の町なんてバランス最高である。各所に雰囲気のあるコマがあり、その素晴らしい風景絵を楽しんだ。
親の役目をやろうと決めたとき、その献身はどちらも人間として信頼出来る。
良い親になれる素質のある人間は、結婚相手として(恋人同士に留まらないという意味)最高だと私は信じている。特に、彼は、ローカンを育てると決意して歩み始めたときから、まともに寝てきていないと言った。その他にもローカンに対する優先度の高さに頭が下がる。こんなに素晴らしい男性はそうそういない。家庭像や子育ての考え方など価値観が共通しているのも、健全な信条が根底にあることを確信させて、落ち着いた手堅い家庭運営を期待させる。
心の奥底に眠り込んでいた、無自覚に互いを意識していたということか。
彼の泣くシーン、これも互いの抑制された態度がほどけて、たった一人の弟を亡くしてしまった悲しみや、自分の悲しみを差し置いて相手の気持ちに立っていた二人だからこその、胸の内を外に出す行動が感動的だった。二人とも人間力が高い。
流れで結ばれるのもとても自然だと感じた。また、そこからの、戸惑いや言い繕いや責任感などなど、こういう人物達なんです、といった作者のキャラ造形にも大人の姿勢を持たせて、この組み合わせはほぼ奇跡という感じがした。
本編入る為の扉絵が表紙の絵と異なるのは楽しいのだが、エンジェル・スマイルの文字が片仮名から成る所為か、ちょっと素っ気なく思った。
タイトルも、考え出してしまうと、よく分からないといっちゃわからない、が。
「初めて」の恋の成就おめでとうございます、だ。
チャドと、ジョアンの、HQ的に二人が死なない藍先生の脳内スピンオフ、実現希望。
折しもBrexitで、北アイルランドとアイルランド間のバックストップ問題議論の真っ最中に読み、この作品、万一にもハードボーダーとなれば成立しにくいな、と原作出版時期のタイミングに苦笑・・