全国民必読の名作漫画。
モグリの天才外科医ブラック・ジャックは、手術の腕は完璧だが患者に法外な治療費を請求するため、彼に恨みや憎しみを抱く者は少なくない。しかし生き抜いてやろうと泥臭くもがく患者や全てを失っても愛する者を救わんとする人の味方である。時に苦悩の涙を流し時に人を愛す彼と、多種多様な病気を抱えた患者と、そして可愛いピノコちゃんの物語。
短編集の形式をとっているので、物語のなかにたくさんの出会いとドラマがある。そのどれもが深く充実していて面白い。
全て面白いのだが、やはり「人生という名のSL」は特別だ。人が出会い交わり過ぎ去っていく一点を交差点と比喩することはあるが、BJにとっては、手塚治虫にとっては、それは様々な乗客が乗り合わせる一台の列車だったのだろう。列車というのは働く何十年もの間に数え切れないほどの人間が利用する乗り物だ。また、ある駅から次の駅に着くまでだけ自分以外の乗客と時間と空間を共有する乗り物でもある。特徴を並べてみると、列車というのはつくづく私たちの人生の性質を有しているおかしなものだと思う。だからBJが過去に出会ってきた人との再会の話で、後方に景色が過ぎ去っていく哀愁と、行き先が確実にあるということが示唆する現在と地続きの未来を列車のモチーフに託した手塚治虫先生は、本当にすごいことを成した。
是非それを味わってほしい。