何がきっかけで一緒になろうと思うか、ひとそれぞれの結婚観があるとは思うけれど、一つの出会いとして、これは奥さんの遺言あったがためのーー。
初対面で互いに相手を好ましく思ったため、亡き妻の勧めに従うことに。会ってみてだめならやめればいい。結婚してみようという気になるのは、わざわざそこ描写しなくても、気に入ったから、に尽きる。
シンプルにいけば、お互い独り身、満更でもない、こんな相手ならいいなと思わない訳ではないからトントン拍子というのも互いに遠距離でなければアリだっただろう。それぞれの配偶者死別の事情の裏の愛情関係は全く異なる状況だった。
彼は妻を精一杯愛しきって看取ったが、ヒロインはそうじゃない。でも、ひとの家庭がうまくいってるかどうかなんて知らないこと多いし、当人にしてもそんな内部事情知られたくないということだってある。
互いに、亡くなった相手のことが頭から離れていないんだろうという思いで、なかなか相手の懐に入っていけない。
そう、結婚を経ていたら一般に一度は誓い合った相手が過去居たということ。ヒロインは結婚して初めてわかった相手の本性を個人的事情として口外していない。そこを伝えるほどの間柄にまだなっていない時期に再婚したものだから、ふたりの疑心暗鬼が始まった。
互いに大人だから千家先生の絵柄が合う。特に彼の所属する階層の描写に不自然さがない。ハーレクインの舞台はセレブ が多いのにそうは見えない作品が結構あるものだが、自宅の雰囲気の出しかたが上手かった。
私が一番好きなシーンは、このテのストーリーにはありがちなのに、ヒロインの願いがよく伝わるシーン、私の欲しいのは月、というところ。山ほどの星をくれる、でも・・・、というところ。
親友に対する後ろめたさもありつつの、でも、自分も彼の心をを求めてしまう、願望とはそうしたものだろう。
愛の無い結婚なんだからなんてやせ我慢する方がおかしいが、大切なことをいわずにいたヒロインがやっと伝えることができて、よかったね、と純粋に思う。