作品名は知っておれど、内容は全く知らなかったため読んでみたが、素晴らしき名作であった。いわゆる時代劇物は、その時代背景故か主人公の目的が当時の社会制約ゆえ壮大ではなかったり、一流の剣士になる等ボンヤリしていることが多いが、当作は柳生一族を倒すという明確かつ時代背景に合致する目的がストーリーの主軸になっており、読む者を迷わせず引き込む魅力となっている。また仕合においては刀だけではなく仕込み槍や銃・爆薬を駆使するなど、正直分かりづらい剣術での決着よりエキサイティングさが増している。そしてこれが一番であるが、ストーリーの核となっている「武士の矜持」ともいうべき作法と心得と魂の描写。今の日本人はどうしてこれを忘れてしまったのか。非常に考えさせられる作品であった。