バイト妃の立ち位置が長い事が、いずれ二人は一緒になるんでしょ?とのわかった気でいる、こちらのお見通しなのよ的な冷めた目をぐらつかせ続けた。
甘やかされたい、溺愛されたい、言葉に酔いたい、そんなニーズを満たす作品なのであろう。
しかも相手は国の最高権力者、一方、主人公が庶民。永遠のそんなド定番物をどう変則バージョンとするか、そこで妃の座は、仮初めであっても始めから手に入れさせる訳だ。
そこそこ不穏な空気が流れる場面は多少現れるも大きな規模に至る前に終息していく。
17巻に後宮という舞台装置についてのシーンが私は、人間の感情を閉じ込めた特殊空間であること、権力者以外の者には虚無感をもたらす場所になってしまうこと、などをしっかりと描写していて、そこには本作品の芯みたいなものがある、と感じた。ほぼほぼ全編、陛下と夕鈴のいちゃいちゃに付き合って、何が本音で何が演技か、というところから、舵を切るところのスピード感が、それまでの緩慢な進展と比べてギャップがあった。70話くらいまでの間に伏線的に仕込んでおいて欲しかった。
最初、「狼」と「子犬」の区別が申し訳ないけれど困難だった。
また、怖い怖いと文字で表現されていても、その絵を眺めているこちらには感じ取りにくかった。
キューピットの正体がわかったところを思い返しても、前半のいちゃいちゃの冗長感は、裏に同時並行で何かを織り込まないと、離脱者を生んでしまう恐れがあってもったいないと思った。
年若い読者向けと思う。