山本先生は大好きな漫画家の一人なのだが、いかんせんその作風は所謂「刺さる人には刺さる」というもので、凄惨な猟奇描写とシニカルな人物描写、無情な世界観は個性的極まりなく、私はいつも先生の描く作品に惹きつけられてやまない。さて、今作はあの誰しもが知ると言って差し支えない『ブラックジャック』の先生の手によるリメイク!
ファンとしては手に取らないわけにはいかない(そもそも好きな作品であるが)。
昨今、アニメ、実写化、そして幾人かの漫画家(なんとAIまで!)により様々な媒体で描かれてきたブラックジャックであるが、それらの論評や評価についてはここで書くことではない…が、先生の描くブラックジャックは、評価の高いOVAやテレビアニメに勝るとも劣らない、ブラックジャックらしさを前面に出した素晴らしいリメイクであった。
(あえてこう書くが)原典を読み返したとき、人間ドラマとして、キャラクターの完成度として、まさに色褪せない、非の打ち所がない名作であると言える一方、医療ドラマとしては手塚御大の絵柄はややデフォルメにいきすぎている、とする評価を抱く。まさに山本先生はそこにこそメスを入れる余地があると判断したわけである。この慧眼!自己評価!!
演者や脚本家、あるいは漫画家のエゴなど付け入る余地がないブラックジャックという名作を、自らの筆と作風でもって活き活きと現代に蘇らせる…大仰でなく、山本先生はまさにそれを本作において成し遂げている。
山本賢治という漫画家により、血色新たに蘇った唯一無二にして最高のリスペクトが込められたブラックジャックを、どうか御一読あれ!