ネタバレ・感想ありあとり硅子短篇集1 ぶどうの瞳のレビュー

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洋風ファンタジーから日本の神様まで
2022年9月5日
274ページ。
水と水晶の中間の透明感と、あっけらかんとしたキャラクターが魅力の作者さん。「こちら側」と「あちら側」の境界線のあいまいさ、不思議なものが当たり前の顔して隣にいるような感じ、「なるようになる」軽やかさ、そして何より、物事を捉える視線にやさしさがあって素敵です。時々無性に読みたくなります。
1993年から約10年間、少年を主人公とした短篇を中心に発表、発表された短篇作品は全てこの文庫版短編集全4巻に収録されています。コメディー部分の物理的勢いあるツッコミのノリは、当時の雰囲気ですね。
文庫版短編集1冊目のこちらは、ファンタジーを集めた約9作品。
〜〜〜〜〜
・『藍色の夜』(52p)異国風砂漠。深刻になりがちなテーマを、ワイルドな力技で明るくまとめてあります。生きて行くのはこんな感じで良いんだよ、って気分になれます。星5つ。
・『 sea green 』(36p)海辺の王国。お気楽第七王子と振り回される従者、そして人魚。幸せなメルヘン。星5つ。
・『天色神殿』(24p)山の上の神殿。寂しさを知ることで幸せも知る。星4つ。
・『ラルゴ』(16p)領主の兄弟とその従者。エロは無いけどこれはBL。後日談おまけ漫画(『ラルゴその後』8p)付き。星3つ。
・『こころの実』(14p)年若い領主と魔女の童話。星4つ。
・『ぶどうの瞳』(12p)お屋敷のご主人と下働きの少年の気の長い恋の話。あらヤダかわいい、って感じのBL。ちょいおまけの星4つ。
・『ともだちにあいに』(16p)いつかのどこか、村はずれの山の上に一人で住んでる変わり者と、そこにいつも届け物に行く少年。押し付けじゃない、一緒に居られるのが楽しい、そんな気負わない友情。好き。星5つ。
・『やまつみのころびね』(30p)現代日本の田舎の生贄話。著者のツボらしい土着の神様、ツボだけあって非常に良い描かれ方。星5つ。
・『夏待ち』(50p)初単行本時の表題作。10年ぶりの母親の田舎、なぜか自分を嫌う従兄弟、そして子供の頃遊んだ相手のお狐様。特に誰かが何をして、という話ではないんだけども、なんとなく楽しく良い方に転がっていく感じ。著者コメントに「描いていて異様に楽しかった」とありますが、そういうのが作品の雰囲気に出たんじゃないかと思います。この作品で、作者さんのことが決定的に好きになった思い出。星5つ。
微笑ましい懐かしさ
2022年8月4日
お値下げのタイミングで島でお勧めのスレを見て読んでみることに。ファンタジーが10話入ってけっこうなボリュームです。ファンタジーといっても大冒険になるような話ではなくどこかの国の昔話を読むような手軽さでどのお話も読後感がかろやかです。1話目「藍色の夜」は導入では意味深い物語になるかと思ったらすごく単純なオチで。狭い世界で人生に悩むことを笑い飛ばしています。生まれたら「生きる」のは当たり前じゃん、と言われているようで肩の力がぬける思いがしました。2話目「seagreen」はすごく好きだなぁ。名作童話のその後を想像してみせた発想もですが、壮大な話にせず家族の物語にしたのがとても良い。和風ファンタジーも2話あり「土着の神様」が作者のツボだそうですがどちらも面白い神様?です。手書きでチマチマ描かれた感じ、小学生のようなノリやテンポ、絵柄など紙面全体が懐かしく優しい雰囲気です。まったく知らない作家様でしたが子どもの頃に出会いたかったなぁ。ファンタジー作品以外にも興味がわきました。
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