メイド頭の言葉でなのか?
なにそれ、そんなルートで大事なことが伝わるものなのか?
とは思ったが、話の冒頭からこういう結末なんだろう、という予測のつく構図だったので、それをいかにヒロインが知らされる事になるか、それを彼女が誰から聞かされるのが最も素直に信じられるのか、を、大事にする語り口、だからこれが最善のルートだ。
驚きも、撤回したい放言も、そのインパクトがもたらす勢いそのままに、彼女にちゃんと彼へ伝えさせる機会を作り、燻っていた心情を、爆発的に外へ出させる。ドラマとしては、ヒロインの心境を想像しやすくて手堅い。
ただ、だろうな、という着地が読者的にヒロインほど新鮮な情報とならないので、彼サイドの受け止め方が上手く盛り上げを形成していたら、より二人の縁の確かさを感じ取れた気がする。これが長い物語ならば、ヒロインと共に味わえた筈の驚きが、この頁数では、いまいちとなる。だから、彼に、頬を少し赤らめさせる程度であとはいきなり「ベターハーフ」発言になると、プロセスが足りない作りに思えてしまうのだ。
例えば、どうせ姉とおなじなのだろう、から、そうでもないかも、への変化をもうひとつ畳み掛けておくとか。日中に頭に浮かぶヒロインを説明よりもっと状態を画像化するとか。
腹黒連中の退治、そこも、将来形ではなく状況報告的なチラ見せ画像を出すとか。
いつの間にかお祖父様も其ほど悪くなかった、という軌道修正も(女中頭フィルターと、ヒロインの受けた止め方との違い)、後にヒロインにもたらされるストーリーのダイナミズムを少し削いでしまった。
ヒロインのネガティブキャラの根源なので、庇い様には他の方法があったような気がしてしまう。
楚楚とした風情のヒロインのドレス姿は美しかった。
彼も、見た目志の高さを感じさせるビジュアルを持っていて、岸本先生の筆致は、理想に燃える姿を嘘っぽくなく滲ませていた。
知性溢れる役どころにしては、ヒロインは、ヒロインの結婚の決意を固めるところを彼に観察された。彼にそこの変化を悟られている割に、その後は内心を隠せるものかとは思う。
ヒロインの実家たる居城のナチュラルな暖かみが、実はヒロインがひねてない、素朴に育てられた経緯を窺わせて、単なる王国王位継承物の宮廷内ドラマでなかったのが良かった。