レビューのタイトルに、登場人物(脇役)の台詞を置きました。ここに、この作品の良さがあります。続きがあります。「自分の気持ちに正直に生きることが大切」と。
ストーリーの流れにはあれこれ疑問がありますが、この一連の、主人公に宛てたメッセージは、ストーリー中の全ての些細なアラをカバーして余りあります。真髄が、家族と囲む和やかな席上のこの台詞に凝縮されています。
それが読み終わると伝わってくるため、★5個を選択させていただきました。
人の目、自分のおかれた状況、何を優先するのか、そして信じられるものは何なのか。結局遺産などアテにしないでここの人たちは皆生きていくことになります。「一瞬一瞬」に人生を委ねたヒロインの御母様の失敗も、過去それはそれでありながらも、ヒロインや周りの人たちは自分に正直な選択をするのでした。
それにしても、簡単に仕事や商談に来なかったり辞めたり就いたりして、裏切りにあっても和解し、疑惑の目を読者に持たせるシーンを所々用意しながら、結局悪人ではなかったりと、いっちゃ悪いけれど話そのものはかなり柔らかい出来上がり。
話のほうに軽い方向転換が多いのでその分だけリアリティを殊更消してしまうこととなり、最後の、「実はー」という説明が威力半減。
コミックの絵のなかで、母マリアが、その気性から帰ってこなかった、というシーンの姿の描写と、騒動を報道されたシーンとして叔父が手にしてるメディア記事が活字でなかったところは、惜しい気がしてなりません。