全編に渡って心理描写がとても細かく深いです。露骨な性描写もありますが、BLに興味の無い方も楽しめると思います。
特に好きなのは「悩めども~」と「カナとがまん」。
「悩めども~」は中年同士の話で、15年前付き合っていた2人がお互い結婚し、離婚し、成り行きで一緒に暮らすようになります。コップに目一杯注いだ水が溢れるか溢れないかの所で揺れている、そんな際どい距離感の2人。若さ故の過ちとしては許されない、だから踏み出せない、中年ならではの苦しみが伝わってきて切ないです。
「カナとがまん」は短いですが、この本の中で一番心掴まれた作品です。泣きました。彼氏がいるのに女と浮気を繰り返す主人公。それが原因で離婚したのにまた繰り返す理由や、傷つきながらも主人公の心の闇を理解していた恋人の言葉に胸が痛みます。そして猫の「がまん」の存在がこのお話の重要な役割を担っています。まるで短編映画を見ているようでした。
他のお話もどれも素敵なのでセット購入がオススメです。ちなみに「やらしい~」「悩めども~」「カナと~」が受け主人公、それ以外が攻め主人公です。