実の娘マロリーをそれと隠して娘を演じさせる父サクソンの心中は意外にも想像できる。冷徹な行動ではあるけれど、金の無心しかしてこない甥や姪に辟易していたのだから これ幸いと娘さえも値踏みしたのだ。いわば、金が彼を操っている。気の毒な事だ。サスペンス風味に展開する物語だから、ヒーロートニーも辛辣。それでも、マロリーに惹かれている彼の表情や行動がポツポツと差し挟まれているのはトキメキ効果大。良い展開です。何よりも、マロリーの気の強さが良い。言いたいことをしっかり言えている。これには、読み手を物語に引き込ませる効果絶大と感じます。また、ハピエンの後日談は、家族としてのまとまりが伝えられていて、ヒーローとヒロインだけの世界で終わりとならないサスペンスであるからこその事後報告という義務をこなしているかのように納得して読み終えることができるのです。ただ一つ心残りがあります。サクソンは、メアリーを愛していたのか?ということ。そこのところの物思いが欲しかった。