病に倒れたとき、リックは、子供のことも家のことも、そしてヒロイン自身への温かい励ましも、なにくれとなくヒロインにいろいろやってくれた。その時の気持ちが、この人が居てくれて良かった、ということ。こう思える人に巡り会えたのは本当に幸運。
絵はいつもの星合先生調。扉絵のカラーが明るく楽しく賑やかに目に飛び込んできて、ダークな作品を読んだあとの目に嬉しい元気さ。全体白い感じが物足りなさを生んでしまう。
ストーリーは、そんな調子のいいことあるかい、というくらい何でも上手くいっちゃって、怒濤の1週間は運命を変える1週間となった訳だ。ちょっと簡単過ぎる話だけれど、ヒロインの働きすぎへの差し水としての小休止は、彼リックが、母子二人の生活に飛び込んだ効用として充分すぎる。前半の手の掛かりそうな彼の、後半に向かって発揮する環境適応力は、もっと盛り上げてくれても良かったような。逆に、さりげなくサポートに回ったところを、読者にだけ描写するからこその、今後の彼との関係に悪い予感を差し挟ませなかった、というべきか。
確かに、ヒロインは男性に警戒しなさすぎて、危なっかしい。頭から信用しているのがよく言えばそれが人を使うということだし、女性だから、それが男女の災いにも繋がり易い。意地は張るくせに、無謀といえば無謀。それでいて、親権を巡る争いに勝てそうな相手の落ち度は羅列できるほど、冷静さもある。
無謀に近い相手への下駄の預けっぷりと、自分が自ら対応に当たるために潔く自らの肌を脱ぐ切り替えの速さ。そのままそこが会社社長としてビジネスチャンスへの嗅覚の高さにも通じるのだから、ヒロインがある意味成功者になる素質を感じさせる事にもなっていて、これで、リックの援護は彼女を公私に渡って大きくするんだなと感じた。
互いに相手を意識するまでの過程で、もっと読みながら動かされたかった。好きになるのに、いつの間にか、というのは私的には大いに結構なのだが、盛り上がっていく高ぶりもまた見たいのだ。
そこが配分として少なすぎた。
この夫婦は新たなベビーシッターが必要になる。二人共社長業、問題の半分以上は既に解決したも同然だけれど、まだ全てクリアしたわけでもない。同じ英国に住む彼の両親の協力取り付けもこれから。
話の結末はこれで綺麗。一方ベビーシッター探しはこの話の根源、頁途中で安心材料確保を、見たかった。