「絶対可憐チルドレン」のスピンオフ作品。本家ではあまり陽の目を見ないPANDORAの大人メンバーを中心に描いており、その観点では本家ファンにも楽しめる面白さがある。ただ本家と比べてしまうと、どうしても気になる点が目についてしまう。
・絵はキレイに見せてはいるが、アクションシーン時の人物動作の躍動感やちょっとした手足の長さの描写等に、稚拙な実力が見え隠れする。まぁデビュー作のようなので、今後の改善を期待したい。
・例えば港でPANDORAの面子をBABELが待ち構えていた際にヘリで囲む描写があるが、歴戦のメンバーがヘリの音を頭上に来るまで気づかなかったというのは無理があり、興醒めしてしまう。このように設定に詰めが甘いシーンが幾つかあり残念。
・人物の心理描写が直情的で、何の捻りも無いのが惜しい。本家はそれぞれの人物が背景(=人生)から来る想いに沿って行動しており、重要シーンでそれらの思惑が重なって盛り上がったり伏線が回収されるのが本当に上手。それらの心理描写が緻密なほど計算されており、言い換えれば全ての人物に感情移入できるほどである。この作品の人物は何かが起きればそれに沿った行動をしてるだけであり、「まぁそうするよね」で終わってしまう。つまり登場人物の心理を深く考察することもなく、ページをパラパラ飛ばすだけになってしまう。
まぁ色々書いたが、本家および椎名氏が天才であるため、この作品が絶対的に悪いということではない。ただ本家より値段が高いのだけは納得できないが。
しかしこの作品にも本家より優れた点が一つある。それはユウギリの可愛さであろう。むしろユウギリを描くためにこの作品を作ったのでは感じるほど、気合いが入っている。