月夜の告白ー高山先生の描くいつもの男性より柔らかい彼が、いつもより低いエネルギーで、裏方みたいな立ち回りして、幸せの遠回りをする。吠えたりしないし、嫌み尽くしでもない。今一歩を攻め切れぬ感じ。ヒロインも積極的な割に繊細ときて、二人ともやや面倒くさい。
遅すぎた再会ーなぜそこまで?と、思える言動をされて、読み手のこちらにどんどん溜まっていくストレス。解消されないまま、いつの間にか彼は気持ちに変化が。
急に不自由になった身体を抱え周りに八つ当たり、という構図は珍しくないが、ヒロインの我慢の先にあるものが、私にはちっぽけに感じてならなかった。
みじめな愛人ーこれも、同時収録の「遅すぎた再会」と被るヒロインの忍耐の力をいやというほど見せつけられる。彼の弟も父親も敵だ。身内を信じるのは現実でもありがちだけれど、読者としてはこちらの作品でも、彼が開眼しない流れにもう辟易。その上、F1レーサー設定まで酷似。 よりかわいくなく見える。
というわけで、イタリアンヒーローとのタイトルが付されているものの、イタリアの男性の魅力を振り撒いてくれず、負の面を強く出されてがっかり。
イタリア人男性を嫌いな人が編集したのかと思えるくらい、揃いも揃って何だかダメンズばかりだ。
ロマンスを読みに来たのに、ロマンスに浸れず、我慢大会の成果を見せつけられた。
駄目男度が最も気にならなかった「月夜の告白」を、二作目か三作目に配して欲しかった。