時代考証そっちのけなのでありえない展開していてそれが肩の凝らないコメディ。上下関係の厳しさを出すための描写も、当人たちの悲劇をよそに、その走った行動がこちらの目には空回って読めて面白い。鳴滝(主人公さやかにとってのアンドレ的立ち位置)登場がどうも何度か荒い飛びを感じたりするのだが、石原先生の腕力?が強くて彼らの正義感がこっちに結局乗り移って読める。鳴滝の人物造形には、長髪・第一ボタン外し・ネクタイ適当、というところもあり、こちらの抱いている大正観をはずしてくれる。道化役の和子が滑稽に敵としても味方としてもさやかの日々を盛り上げてくれるのだが、さやかとのハグに、和子にとってのさやかほどにはさやかは和子を扱っていないような、淋しさも少し感じしまう。
柱を読んだら、元は平安時代の妖怪退治とあり、それはそれでそのうち読んでみたいと思った。本作は竜も登場したし、のちのドラゴン登場作品も発表されたし、で、そのアイディアは消えたのだろうか。。
自由の空気が生まれ始めたのと、まだまだ封建社会の残る風潮と、相反するような要素を持ってるこの大正という時代設定は、身分格差恋愛にはちょうど良いと感じる。ナニサマなの?という口の利き方をする命令を下す側にいる人間たちと、(現代の我々には理不尽なものであっても)命令には従わなければならない使用人たちの立場、そんな状況の中でもどかしく進む関係、本来は深刻な苦悩を描くような場面さえ乗り越えるだろうとの思いで眺めてしまう。そのため、男女逆の「麗しのサブリナ」的で見て最後まであまりハラハラすることはなかった。
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全2巻。両巻共巻末におまけ漫画収録4頁、2巻はほかにもおまけ漫画あり。
また、第1巻は「ルカと盗賊」(32頁)。初期作品らしいが、本編よりももっとのびのび描いた印象で、バタ臭さが醸し出せる先生だと感じた。何作目か不明だが、窓などの大道具の使い方、どろぼうの大胆キャラ、などなど、ほんとに新人レベルなのか?と思った。
初単行本tだというのが信じられないほど、キャラの顔がすっきり慣れたラインで描かれているようで美しく見えた。ただ、作品中の崩し顔が崩れすぎと感じるところはあった。