残酷な神が支配する
」のレビュー

残酷な神が支配する

萩尾望都

萩尾先生こそが神では…

ネタバレ
2018年6月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ まずタイトルからして他の追随を許さない。

私個人は
この先生の真骨頂をSFだと思っていますが、この現代劇の表現方法にも取り入れられて目を見張ります(特にジェルミの心象風景など)

お語は重く重く、最愛の母に生贄として差し出される少年ジェルミが壊れてゆくさま、
彼の内面と、それを追う美貌の義兄イアンの情動が中心になりますが
まさに破壊、崩落、再生の物語。

その流れを季節や日常風景を交えて
繊細で叙情的な美しい絵が彩ります。

本当に、比肩するもの見当たらずと言う感じの画力。
最近他の大御所先生が絵の劣化で叩かれまくっているのに
(私も叩いてますが…)
全くの衰え知らずって何なんですかね。

その最高峰の筆致で描かれる
生き生きと活動的なボストンでの生活と
イギリス郊外の深い森の奥で貴族の館のようなお屋敷に捕らわれる日々、
時代さえ遡行したかのような対比が凄いです。

おっとりと少女のように可憐な母親、サンドラのファッションも
童話の世界のよう。
その彼女が保身と欲望の為に息子を裏切るのは余計に恐ろしさを際立たせます。

これほど重厚なお話なので登場人物も多いのですが
(キャラという名詞が似合わない。登場人物です)
それぞれに物語があり、背負うものもリアル。
そう、リアルなんですよね。
こんなヘヴィーな内容なのに。
さすがの熟練、匠の技とカルマです。


ジャンルは少女漫画にもBLにもヒューマンドラマにも括りにくく、そのどれもに当てはまるように思います。

私はプラチナブロンドのイケメン義兄イアンが好きなんですが、
余りに真っ当で健康的で(心が)
普通過ぎるように見えて来てました。
ジェルミがアビーと呼ばれる中で出逢った人々の中では
双子がとても印象的でした。

この重さをじっくり味わいたい、どっぷり侵食されたい人に読んで頂きたいです。
☆5では足りません。
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