にいちゃん
」のレビュー

にいちゃん

はらだ

この生々しい題材をよく描ききってくれた

ネタバレ
2018年9月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 広告につられたのと、好きな作者さんの作品だったので読んだのですが...前半思っていた展開とは異なり、良い意味で予想を裏切られました。もっと非現実的な展開かと思っていましたが、人間一人一人の心情や表現が思っていた以上に本当に生々しくてリアル。驚きました。

テーマについては賛否両論あると思うし、共感する人もいれば、しんどくなる人もいれば、気持ち悪いと感じる人もいるのだろうなあと言った感じ。そこも含めて、それこそ作中でも描かれているリアルな世論なのだと思います。
主人公や家族や友達や通りすがりの人たち、きっと登場人物の誰もが正しくて誰も正しくないし、誰もが間違っていて誰も間違っていない、正解などわからないままそれぞれ心の赴くままに、確かにどれも存在している、そういうものなのだと考えさせられました。

犯した過ちはけして許されることではないと思うのですが。それでも、一人の人間として悩んで泣いて逃げ出して、決めたはずなのにまた葛藤して...、そんな姿は、見ていて辛くもあり、とても愛しかったです。
現時点ではひとつの結論にたどり着いたけれど、それはあくまで現時点での話。切りたくてもなかなか切れない人とのしがらみにまとわりつかれながら、この生きにくい世界でこれからも彼らは生きていて、生き続けていくのだと。そう感じさせる作品でした。

最後少し残る苦さも含めて、出会えてよかったと思える作品でした。
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