甘くて切ない
」のレビュー

甘くて切ない

月村奎/yoco

しっかりしたかわいそう受

ネタバレ
2019年2月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 出版社の新刊案内のツイートや表紙の雰囲気からも覚悟が必要とされるかわいそう受の新刊です。月村先生ならばなにを今更といわれても仕方のないそちら方面の名手ですが、今回は親子関係にアプローチしておりあ〜、あるな〜…ていささかしょんぼりしがちになるシチュエーションでした。

ですが、今作の主人公律くんはダメ親のいいなりにならずちゃんと距離を取り、いままでの生活を取り戻すかのように毎日を小さな喜びで彩ってゆきます。
仕事の人間関係も良好で、やや自虐的に自分が必要とされたいから他者にも親切にするんだと思っていますが社会はそれでいいんだよーと老婆になり孫を見守る姿勢に入りましたね。。。

そんないいこの律なのでちゃんとステキな王子きょうだいがふたりあらわれるのですが、こちらはこちらでぎくしゃくしており、律が潤滑油になって関係が再生されてゆく流れは読み応えがありました。
特に彼氏の弟くんの明るくまっすぐなキャラクターがよくて、彼氏の役割をするっとこなしちゃうところがありその分作家彼氏が少し地味に感じました。これは予告でサイコみのある抱擁攻を期待しすぎたせいもあると思います、すみません。
というのも律は結局自分の気持ちを大事にした結果母親にもそれを言えるようになるんですよね。律は月村作品の中でも出色のしっかりしたかわいそう受では! と思いました。生活能力が高いって本当に大事なんだ……そしてこんな子の名前が「律」って出来過ぎでは??

ハッピーエンドの後も律と母親の関係はスカっとはしないけれども現実的な落とし所でこれはこれでありだなと思いました。そのうち彼氏は律を家に迎え入れるだろうけれども、そのときも渋る律にきみがいないと書けないし餓死するかもしれないとそっち方面で落としにかかりそうです。律はもちろんそれは大変だ! て網にかかる、かんたんに。
切ない、というのは彼氏とではなくて家族関係にかかるのかなーなんて思いました。
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