最終兵器彼女
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最終兵器彼女

高橋しん

2019年夏に再読して

2019年8月11日
20年近く前のこと、生徒が持ってきた単行本を借りて全巻を一晩で読みました。すぐ隣では連れ合いが、私が読み終えた巻を受け取って、やはりページを静かにめくっていました。ふたりとも、ページをめくる手が時折止まって、情感豊かな、あるいは切れ切れな描線をじっと見つめ、見開きいっぱいに並ぶシュウジのマインドボイスやちせの日記を口の中でなぞっていました。どうにも許しがたい「集合としての人間」の愚鈍さに対峙する個人。「人間なんてこんなものさ」という諦観と、それでも「人は愛おしい存在なのだ」というあたたかな想い。2019年の夏、再び黒雲が世界を覆い始めたような今、この作品を再読して、互いを思いやることを、もう一度強く胸に刻みました。
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